選手インタビュー/花岡 伸明 HC兼TD

<選手インタビュー2011秋 ヘッドコーチ兼チームディレクター 花岡 伸明>


「世界で活躍している女子選手たちと、強化についても、普段の生活についても、社会に対する意識にしても、同じテーブルで、同じレベルでコミュニケートができるアスリートになれるよう指導していきたい」
東芝府中やヤマハ発動機という社会人のトップチームから、母校の筑波大学、ジャパンA代表、U21、U19日本代表まで、幅広い指導実績を持つ花岡伸明HC。その豊富な実績と経験は、目標に“2016年のリオ五輪出場”を掲げたチーム作りの根幹となって生かされている。
上田昭夫GMとのコンビ復活で、いま再び世界への挑戦が始まった。

創部したばかりですが、TKM7とはどんなチームですか。

最初に女子に特化した医療法人のチームとお聞きした時に、2016年のリオ五輪に始まる7人制ラグビーに向けて様々な可能性を感じました。
私は東芝、ヤマハ、日野自動車などの社会人チームを指導してきましたが、15人制ラグビーチームの場合は、1チーム45人、各ポジション3人ずつ位の選手を抱えているのですが、もっと緻密な強化を行うことが可能だろうと常に感じていました。それは、一人ひとりの体組成の特徴や体力レベル、或いはスキルレベル、そして選手としてのトータルな目標設定などをパターン化されたシートに落とし、選手と指導陣、フロントスタッフ、そしてメディカルスタッフなどが情報共有しながらやっていくことです。
東芝やヤマハの経験からいうと、メディカルスタッフ陣が充実しており、チームドクターはじめ理学療法士、アスレティックトレーナーなどが、綿密な情報共有と選手への落とし込みを行っています。そういった取り組みを、セブンズという少ない人数で、それもあまり前例の無い女子のチーム、また医療法人をバックボーンとしているチームであれば、更に細かく具現化出来ると思ったのです。
現在チームは、クラブオーナーの横川秀男理事長はじめ、チームドクターであるリハビリテーション病院の久保実院長など、数ある病院を拠点に、専門を持ったドクターの方々に指導をいただいています。選手一人ひとりに対して、通常の健康診断にはじまり、形態測定、体力トレーニングの実施と評価、その結果による次の段階のトレーニング計画策定まで、選手との個人面談を含みながら活動しています。こうした基盤を生かしてインフラを整えつつあるので、今後のしっかりとしたアスリート作りに是非とも生かしたいと思っています。

女子チームのHCとして注意しているところはどんな点でしょうか。

やはり男性とは身体の構造が違うので、同じようなトレーニングはできないだろうと思うし、他種目に移ったことで、当然のことながらメンタル面での悩みなんかもあるでしょう。我々には言いづらいようなこともあると思いますので、スタッフが重要になってきます。それはマネジメントサイドもそうですし、スタッフサイドもそうです。今はインフラ機能の充実から入っていますが、なるべく女性のスタッフに関わってもらおうと考えています。病院というもともと女性職員が多い環境なので、適材適所で今後も女性スタッフを増やしていきたいと思っています。

上田GM兼監督と花岡HC兼TDの役割を教えてください。

上田さんとは日本ラグビーフットボール協会のユース強化をいっしょにやってきましたが、長期的なビジョンを立てるのが非常に上手い方で、なおかつ結果も出しています。身近で見ていて勝負勘に優れた指導者だとも思っています。また、上田さんは有言実行なので、まずはそのビジョンの中身を指導現場などで具現化させていくのが私のミッションだろうと思っています。
現在上田さんはフジテレビの社員という立場で指導されていますが、私は職員として医療法人の組織の内部にいますので、グラウンドの指導に限らず、チームディレクターとしての立場から職場内での調整を行うことも私の役目だと思っています。

選手たちのポテンシャルについてお聞かせ下さい。

6月29日に第1回の練習をしたのですが、人工芝で熱せられた40度を超える中を、通常なら1時間くらいで切り上げねばならないような状態でも、「ぜんぜん平気」と言うし、スキル的にもあまりボールを落とさないんですよ。キャッチングはみんな上手い。それもキャッチする時の姿勢が低く、体幹がしっかりしていて前傾しています。パススキルはめちゃくちゃですが、キャッチングはしっかりしているなと思って見ていました。
8月以降、希望により数人は仕事に戻り、セブンズを続ける意志を持ったメンバーだけが残りました。その中には小柄な選手もいるのですが、それぞれに面白い可能性を持っていると感じています。
体幹が強化され低いプレーが出来るようになれば、相手がタックルに入りにくいとか、海外のチームと戦う際にも、身体が小さい日本人プレーヤーの特性を活かせると思うんです。
実際にゲームを行える段階になったら、選手の特性を見ながらポジション的な役割分担をしていきたいと考えています。
現状ソフトボールから転向した選手が多い中で、ラグビー経験者の横山の存在が非常に重要です。現在も色々とアドバイスを送ってくれています。来年以降も他競技からの選手が入って来ますが、試合が組まれるようになれば、チーム作りには経験者の力が欠かせないと思います。

そのチーム作りについてもう少し。

今はラグビーの基本的技術と体力強化をやっているのですが、上田監督の考えもあって、そこはブレないでしっかり時間を掛けて取り組んでいます。これで来年以降、部員が増えてくれば試合を組むことになりますので、今はその過程として、3月までにラグビーが出来る体力とスキルのベース作りをしたいと考えています。
そこからはソフトボール出身だろうが、他競技出身だろうが、経験者と同じテーブルでの競争になるでしょうね。
体力測定をしてもみんな右肩上がりですからね。疲れや怪我で個人差は当然ありますが、概ね順調に伸びていると言っていいんじゃないでしょうか。

最後の質問です。TKM7を将来的にどういうチームにしたいとお考えですか。

日本人の女子アスリートはいろいろな競技で、世界中で活躍しているじゃないですか。「なでしこジャパン」とか、女子柔道、女子マラソン、女子レスリング、女子スピードスケートとか。今回オリンピックから外れてしまったソフトボールもそうですよね。これらの競技に関わる人たちはそれこそ必死に練習で追い込んでいる訳で、ラグビー界も強化体制に関しては負けずに真剣に考えないといけないと思っています。ラグビーに関して言えば、現在アジアでは中国が先行しているけれど、日本の女子ラグビーはこれからだと思うんです。我々はいま7人制のゲームとは何かを体力面、戦術面などから洗い出しをしている最中ですが、今後「現在のレベルはどれくらいにあるのか」など個人面談を行い、選手とスタッフが納得しながら、オリンピック予選を突破できるレベルに引き上げていかなければなりません。TKM7としては、その予選を争っていく日本代表にまずは選手を送り込みたいですね。そのプロセスの中で、先ほど申し上げたように世界で活躍している女子選手たちと、強化についても、普段の生活についても、社会に対する意識に対しても、同じテーブルで、同じレベルでコミュニケートができるアスリートになれるよう指導していきたいと思っています。
TKM7は普段はこんな仕事をして、こんな生活をして、職場の皆さんにはこういうご理解をいただいて、練習は週何回、こんな内容でやっていて、ターゲットはこれで……、というように自らを語れるアスリートになってほしいんです。
そういう大人の選手に育てていきたいですね。


―練習前のお忙しい中ありがとうございました。
ヘッドコーチ兼チームディレクターの花岡伸明さんにお話を伺いました。

                                                                                                                                 (取材・文 大元よしき)