選手インタビュー/上田GM

<選手・スタッフインタビュー2011秋 ゼネラルマネージャー兼監督 上田 昭夫>

ゼネラルマネージャー兼監督の上田昭夫さんに、国内初の医療法人チーム「TKM7」について伺ってみたいと思います。
上田GM、よろしくお願いします。

ハイハイ、どこからでもどうぞ!

今なぜ女子ラグビーチームを立ち上げようと?

2016年のリオ五輪から7人制ラグビーが正式種目になります。男女ともにオリンピックに出られるチャンスがやってきたとは言っても、7人制ラグビーの国内大会は少ないですし、現状アジアのNO.1でもありません。それを狙える位置づけでもありません。せっかくオリンピックという舞台がありながら、女子ラグビーの現状はクラブチームが主体なんですよ。これでは強化が進むはずがありません。
2016年というのは、時間があるようであまりないんです。
そこで日本の女子ラグビーの核となるような、選手が安心してプレーができて、なおかつセカンドキャリアも含めた将来性のあるチームを作る必要があると考えました。
女子の選手は精神的に強いので、身体をきちんとケアして、やる気さえあれば年齢に関わらず十分にできると思っています。

海外のチームに比べ、日本代表の強化の進み方は?

オリンピック競技になりましたので、各国ともに強化し始めています。カナダはオリンピック委員会から資金が出て強化が進み、香港セブンズでは優勝しました。中国は国を挙げて強化に乗り出していますし、韓国も始まっています。アメリカは元々7人制が強い中で、さらにメダルに向けた強化を進めているようです。
それに比べ日本の女子ラグビーの歴史というのは、日本ラグビーフットボール協会に入っていない独自の連盟でスタートしたこともあって、強化という点ではかなり遅れているんじゃないでしょうか。



アジアの国々と比べても遅れていると?

中国は強化しています。カザフスタンは元々身体が大きい選手が揃っているのですが、それに変わる選手がどれだけ育成されているかですね。そこはわからないので、とにかくカザフスタンのように、身体の大きな選手に勝てるチームを作らないといけないと思っています。
今の女子選手たちは毎日のように練習ができる環境にはありません。
ラグビーなので怪我はつきものですが、TKM7は病院の職員チームですから、その面では整っていると言えますし、私も花岡HCもトップコーチの資格とIRBのコーチ資格を持っています。その他3名の若手男性コーチがいますので、コンタクト練習の相手をしたり、プレーでお手本を見せられるから、ラグビーの経験がなくても思いのほか上達は早いですよ。

強化が遅れている現状をどのように埋めるおつもりですか?

TKM7は、きちんと仕事を持った企業チームとしては国内初です。もちろん医療法人としても初めてなのですが、それによって選手たちは生活が安定しますので不安がありません。それと同時に身体のケアが出来ることが最大のメリットではないでしょうか。
あるクラブチームの場合ですと、大震災の後に節電でナイターが使えず練習ができなくなって、参加者が少なくなっていると聞いています。そういう点、やはりクラブチームよりも企業のような組織を持ったチームの方が、練習環境は整えやすいと言わざるを得ません。

今回のチーム作りは医療法人柏堤会としての単独ではなく、女子7人制ラグビーをお金ではなく物でサポートしていただける企業を多く集めたいと思っています。
8月8日にスタートした時点では8社。ここに来てもう1社増えています。いろいろな業種の企業にサポートしていただき、育てていくことが大切だと思っています。

目指すところは日本女子ラグビーの“核”となることでしょうか?

そうですね、すでに日本ラグビーフットボール協会には、「女子7人制日本代表の拠点を戸塚にしてはどうか」と伝えています。
そのメリットは我々が使っている環境がそのまま活かせるという点です。まずは横浜FCの人工芝のグラウンドですね。戸塚駅のすぐ近くにはスポーツジムがあります。それにメディカルチェックができること、怪我をしたらすぐに搬送できること、また将来的には寮ができることなどです。
熊谷に行ったり、辰巳を使ったりというよりも経費を削減しながら、効率よく強化が行える方がいいんじゃないかということで提案しています。
このようにして将来的にはTKM7と女子7人制日本代表チームがいっしょに練習する機会を作りたいと思いますし、日本代表の選手が、我々の練習に参加したいという要望があればお受けします。
こういった形で環境を整えることはできるのですが、あとはその選手が平日に練習ができるかどうかですね。仮にTKM7の一員になれば仕事の不安はありませんし、練習環境も整っています。食事も提供しますから、安心してラグビーを続けることができます。
日本ラグビーフットボール協会とパートナーシップを結び、その中から我々も選手を育て、日本代表に送り出せればと考えています。

6月29日初めて選手に会った時の印象は?

実際にチームを作った際のシミュレーションということで、ソフトボール部出身者を中心にして、まずは練習をやってみましょうとなったわけです。
今までまったくラグビーに関係してなかった新人が集められて、「さぁラグビーの練習だ」となったのですから、みんな驚いたでしょうね(笑)。

まずは第1ステージとして6月29日~8月5日まで。練習時間は午後。あの頃は何時に集合して、何時に病院を出て、何時に横浜FCに着いて、練習、その後銭湯に入って、何時にご飯を食べて……というようなシミュレーションを行いました。
その後ジムでのトレーニングをスタートしました。
この第2ステージの練習は週2回で朝8時から。
ラグビーを続けたいという希望者を確認したところ5名が残りました。そこへラグビー経験者(元日本代表)の横山里菜子が加わったのです。チームにとって、経験者がいるということが大きな要素になりました。

朝8時からの練習でしたが、人工芝なので40度以上はあったと思います。熱中症が心配されましたが、ここを乗り越えられたことが大きいですね。
9月の第3ステージからは週に3回のグラウンド練習になりました。その後ジムへ移動しトレーニング。毎週金曜日はフィジカルアドバイザーによる「パワーカーディオ」というバーベルを使ったレッスンが始まりました。

ラグビーというとすぐにパスを教えたり、コンタクトさせたくなるのですが、まずは怪我をしない身体を作るために時間を使い、体脂肪を燃やし、筋力をアップさせたいと考えています。年内はここに時間を掛けて、次のステップに入りたいと思っています。

選手のトレーニングの進捗状況はどのようにチェックしているのですか?

毎月1回のフィットネスチェックを行っています。40m、50m、1500m、立ち幅跳び、ベンチプレスなど、あとは体型ですね。体重は同じで体脂肪が減る。そうすれば確実に筋肉が付いているということですから。それをデータで見ています。
それにサポート企業にSUUNTO(スント)アメアスポーツジャパン㈱さんの時計がありまして、これで心拍数とGPSを使って走行距離を計測することができるのです。今のところ1回の練習で6kmほど走っているのですが、これが適切なのかどうかはこれから検証します。
現在、女子の7人制の試合でどれだけ走っているのか、その距離を計測したデータがないんですよ。望月アスレティックトレーナーが海外のデータなどを調べていますが、15人制はあっても7人制はありません。探しても見つからない。だから、それを作って公開するのも我々の仕事だと思っています。
本来、こういうものは日本協会が行うものですよ、フィットネス値の目標ということで。
企業チームのあり方を示すという意味でも、このチームがやるべきことはたくさんあります。

身体作りは進んでいますか?

元々ソフトボールの選手は体脂肪が多いんです。少し時間は掛りましたが、9月の測定では、かなりデータが良くなっていました。すでに理想的な体脂肪の選手も出てきています。9月までは全体で行ってきましたが、10月からは個々にテーマを与えてトレーニングしています。
体脂肪の多い選手は3食の食事と体重を必ず書くようにしています。

毎日練習する方がいいと考えている人もいますが、そんなことありません。
今は週3回の練習でいいと思っています。将来的には週4回にしたいと考えていますが、まずは週3日で2時間集中してミスの無いようにすること。集中することによって中身を濃くするんです。その他の4日間はジムに通って、与えられた課題に対し徹底的にトレーニングを行う。それができるか、できないかは個人の資質の問題です。それができるならば、ラグビーをやってもいい選手になれますよ。
今の時期は身体のバランスを整えて筋力をアップすることです。

我々は医療法人のチームであるからこそ、サポートしてくれる企業もあるんです。タオルとか携帯酸素など。将来的にですが、寮が出来たら酸素部屋も考えています。疲れも取れますからね、怪我の回復も早いですし。

集中ということですが、具体的には?

7人制ラグビーは7分ハーフですから、練習は7分を基準に行っています。グラウンドの縦方向を使って7分間走っていますし、パス練習でも3分半、3分半、なるべく7分というものを身体に覚えさせようとしています。
オフサイドタッチというゲーム形式の練習も7分ハーフで行っています。7分間をしっかり身体に覚え込ませて、その中でマックスパワーが出せるようになってほしいですね。

今のところ、思っていた以上にみんないいですよ。

「パスはこう投げるんだ」みたいな指導はしたくないんです。個人の手の長さや大きさが違いますからね、まずは投げさせて「もっと速く投げたい」とか「上手く投げたい」という気持ちが起こったときに指導したいんです。その方が絶対に上達しますから。
意識がないときに、無理に教えても上達はしないでしょ。
集中ということでは効果が出てきたと思います。
7人制では個人の責任が非常に大きいんです。だから選手一人ひとりをしっかりと自立させたいと思っています。

ラグビークラブ側から見た職場はどうですか?

横川理事長はじめ小島事務長、岡本事務長と情報を交換しています。たとえばジムに通っている回数が少なかったりとか、食事をしっかり食べていなかったりすれば、体調が悪いかもしれませんからね。その場合は望月ATと連絡を取って、すぐに診てもらうなど対応しなければなりません。
まずは彼女たちに不安を持たせないことです。何かあればすぐに望月はじめ、私にでも話せる環境作りですよ、それを心掛けています。仕事のこともすぐに言って来てほしいですね。すぐにサポートして、職場ではかわいがってもらえるような人になってほしいです。

ここは医療法人ですから、明るさが大切です。練習中に笑ってもいい、でもオンとオフの切り替えを早くして、集中して練習する。
月に1回はチームで食事会を開いて、個別面談も行っていきたいと思っています。
入職した職員を一人前に育てるのは柏堤会の職場だと思いますが、私が預かることによって、職場とは異なる方法で人間的に磨きを掛けてお返ししたいと考えています。それを職場で活かしてもらう。そういう連携を取りたいと思っています。




―選手・スタッフインタビューは継続的に行われる予定です。
次回もまたよろしくお願い申し上げます。


上田GM兼監督、ありがとうございました。
                                                          (取材・文 大元よしき)